令和3年1月7日
新型コロナウイルス感染症の急拡大による
長崎医療圏の医療の非常事態について
長崎大学病院 病院長 中尾 一彦
長崎みなとメディカルセンター 院長 門田 淳一
日本赤十字社 長崎原爆病院 院長 谷口 英樹
済生会長崎病院 院長 衛藤 正雄
新型コロナウイルス感染症の第3波による感染拡大が止まらず、感染症治療のみならず、感染症治療以外の医療が甚大な影響を受けています。すでに長崎市内の医療機関においても救急患者の受け入れに支障が出ており、予定の入院や手術の延期が余儀なくされています。すなわち、医療全体が崩壊しかねない非常事態を迎えています。
1.新型コロナウイルス感染症の診療のため縮小している一般病床について
重症を含む新型コロナウイルス感染者の急増を受け、コロナ診療を担当している長崎市内の4病院(長崎大学病院、長崎みなとメディカルセンター、長崎原爆病院、済生会長崎病院)で約400床の一般病床を縮小し、看護師、医師のマンパワーをコロナ診療に注力しています。この数は、1つの病院の病床を使用できない状況に相当します。
このことから、重症、緊急など命に関わる疾患を優先的に治療し、治療を待機できる場合は、入院の延期をお願いする事態も起こっています。
2.救急医療体制について
長崎市内の二次救急医療を担う20医療機関のうち、3つの病院で院内感染が発生していることから、現在残りの医療機関で連携し、二次救急医療を支えています。しかし、そのうちコロナ診療も担う長崎みなとメディカルセンター、長崎原爆病院、済生会長崎病院の3つの病院では、上述のとおり、一般病床数を縮小しているため、救急入院の受け入れが厳しい状況に陥っています。また、これに伴い、他の救急協力医療機関でも満床に近い状況になっています。このままの感染拡大が続くと、救急受け入れができなくなり、脳卒中・心臓病などの救急医療が停止するような危機的状況になることも想定されます。
3.市民の皆さまへ
上記のとおり、長崎医療圏では今まさに医療崩壊が始まっています。三密回避、マスク着用、手指消毒などの感染防御対策はもちろんですが、不要不急の外出・会食を可能な限り自粛いただき、感染の機会を減らしていただくよう、お願いいたします。皆さまの慎重な行動が、長崎医療圏の医療体制の維持に繋がり、救わなければならない命を救うことにもなります。何卒ご協力よろしくお願いいたします。
長崎医療圏の医療体制を守るため、これ以上の感染拡大を防ぐことが、
医療スタッフにとって最も励みになります。
これまで以上に感染防止対策を徹底いただきますよう何卒よろしくお願いします。
長崎みなとメディカルセンター 院長 門田 淳一
(1) | 入館される皆様の体温チェック実施 正面玄関にサーモグラフィーを設置し、入館される皆様の体温チェックを実施しております。検温時に37.5度以上の方には、別途問診票の記載をお願いし、診察室や待合室の変更等をご案内しております。 |
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(2) | 全入院患者の事前PCR検査実施 全ての入院患者さまを対象として、入院前に新型コロナウイルスのPCR検査を実施しております。 |
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(3) | 毎日の全職員の体温・健康チェック 全職員及び一部の委託業者を対象として、休日も含めて毎日2回、体温を測定し、グーグルフォームで記録・管理しております。体温が37.5度以上のスタッフは、担当部署から連絡し、健康状態を確認しております。 |
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(4) | 職員への感染予防対策教育の強化
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(5) | 手指消毒や共用物品の消毒の強化 こまめな手指消毒を実施するほか、共用物品の消毒を1日3回の全館放送で呼び掛け、環境衛生に努めております。 |
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(6) | 通常診療エリアと新型コロナウイルス感染症診療エリアのゾーニング(区分け)実施 新型コロナウイルス感染症疑いの方の受け入れについては、通常診療の方が利用する正面玄関とは異なる入口から入館いただき、診察室は独立した陰圧室(室内の空気が外部に漏れないよう、外部より気圧を低くしてある部屋)にて診察いたします。また、スタッフは個人防護具を付け、感染対策を徹底して診察にあたります。 新型コロナウイルスの感染者の方が入院される際の受け入れ体制については、受け入れ病棟を1つの専用病棟に限定し、治療を行う間は陰圧室に入室いただいております。また、専用病棟の出入口ではレッドゾーン(感染者の区域)とグリーンゾーン(清潔区域)の境目を明確に示し、スタッフはレッドゾーンへの出入りの前後で個人防護具の着脱や手指消毒を実施しております。 |
(7) | 職員の日常生活での注意事項の設定 職員の不要不急の県外移動は原則禁止とし、飲酒を含む会食についても、人数や回数を一部制限するなど、感染リスクの高い行動を避けるよう注意事項を設定し、職員への注意喚起を行っております。 |
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なお、(3)(4)(5)の項目の実施状況につきましては、第三者評価委員会へ毎月報告し、評価を受けております。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中、複数の企業・団体、個人の方から当院へマスクなどの医療物資のご寄附のほか、食品の差し入れなどを多数いただいております。当院へのご配慮とご厚意に、この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
ご寄附いただいた医療物資は大切に使用させていただき、引き続き効率的な運用に努めてまいります。
依然として緊張状態が続く医療現場のスタッフにとって、地域の皆さまからの温かいご支援、ご声援が何よりの励みになっています。
これからも全職員が一丸となって、安心・安全な医療を提供できるよう、努めてまいります。
<寄贈を頂いた方のお名前、企業・団体名>
(五十音順・一部敬称略) 2020年11月30日時点
なお、個人名・企業名・団体名の公表を希望されない方に関しましては、掲載しておりません。
また、このほかにも多数の心のこもったお手紙やメッセージ、寄せ書きなどもいただいております。
横断幕やライトアップ等による医療従事者への励ましにも、職員・スタッフ一同勇気をいただきました。
併せて御礼申し上げます。
令和2年7月10日に当院職員(医療職)の感染が確認されて以降、当院ではこれまでに入院中の患者さま7名と職員10名、全17名の感染が確認されました。うち、令和2年7月に陽性が確認された14名については、院内のある1つの病棟(以下、「当該病棟」と呼びます)で感染が確認されており、院内クラスター発生という事態になりました。当該病棟でクラスターが発生したことを受けて、感染者の接触者(※1)および全職員へのPCR検査を実施するとともに、7月13日には、新規入院患者の受け入れ、外来診療、手術、救急患者の受け入れについて診療を一時的に全面休止とさせていただきました。
その間、当該病棟の入院患者さまに対して毎日の検査を実施し、また感染対策についての会議と対策強化を重ね、7月27日の第三者評価委員会及び28日の現場訪問で診療の一部再開可能との評価を受け、7月29日から一部の診療を再開、8月13日に全面診療再開となりました。
その後、8月18日から25日にかけて職員から感染者が3名確認され、接触者検診を実施しましたが、それ以上の拡がりは見られず、クラスターには至りませんでした。
現在は、職員が一丸となって徹底した感染対策を実施し、新型コロナウイルス感染症の予防と拡大防止に努めております。
(※1)感染者の院内における濃厚接触者はおりませんでしたが、業務上接触した患者さまや職員に対して検査を実施し、感染の拡がりがないかを確認いたしました。
判明日 | 人数 | 入院中の患者さま | 職員(医療職) | 職員(事務職) |
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7月10日 | 1 | - | 1 | - |
7月11日 | 2 | 1 | 1 | - |
7月12日 | 4 | 1 | 3 | - |
7月13日 | 1 | 1 | - | - |
7月20日 | 4 | 2 | 2 | - |
7月21日 | 1 | 1 | - | - |
7月27日 | 1 | 1 | - | - |
8月18日 | 1 | - | 1 | - |
8月24日 | 1 | - | - | 1 |
8月25日 | 1 | - | 1 | - |
合計 | 17名 | 7名 | 9名 | 1名 |
2020年11月17日現在
お問い合わせ・ご連絡先
長崎みなとメディカルセンター 企画総務課
TEL:095-822-3251(代表)